自分で納得するスタイルを得るための2つの方法
今回の要点
- 現状の運動習慣に関わりなく、新しい運動にチャレンジすれば自分の体型(スタイル)を好きになれる
より確実に効果を得るためには
- 運動を週2回以上の頻度で実施する
- TV、雑誌、SNSなど視覚的にスタイルをアピールする情報には触れないようにする
より詳しく知りたい方に
ボディイメージとは
人はそれぞれ理想とする体型のイメージ(ボディイメージ)をもっています。そのボディイメージと自分の現状の体型とが異なると感じる場合は不満が生じ、自分の体型とボディイメージがマッチすれば、満足感が得られます。
自分の体型に満足していますか?
海外の調査では、若年女性の50%、中高年女性の60%が自分の体型に不満足であると回答しています。
自分の体型に不満(ボディイメージと現状のミスマッチ)を感じるとそれを理想に近づけようと、急激なダイエットなど不健康な行動をとるようになります。
しかし、多くの場合は短期間のダイエットでは理想の体型に到達できず、多くの場合リバンドを繰り返すことも。
さらにボディイメージのミスマッチが悪化すると、うつ病などの精神疾患や拒食症を引き起こすことも報告されており、ボディイメージが現実とかけ離れることの健康リスクがとても大きいことが分かります。
メディアの影響
なぜ私たちはそれほどまでに高いボディイメージを掲げてしまうのでしょうか?
私たちが理想とするボディイメージはメディアの影響を強く受けることが多くの研究結果から示されています。
TVや雑誌で出てくる細身のモデル体型を何度も繰り返し目にすると、あたかもその体型が世間一般の標準体型であり、自分にとっても理想的(他人から見ても魅力的)である、という非現実的なボディイメージを創り出すのです。
平均的なBMI(体型の指標:体重(kg)÷身長(m)の二乗)のモデルが掲載されている記事と、平均低いBMIの細身のモデルが載っている雑誌を被験者に見せた結果、平均的な体型のモデルを見ても心理的な影響は観察されませんでしたが、細身のモデルを見た後の被験者は自分の体型に不満を訴えることが報告されています。
またこれまでに実施された77の異なる研究のメタアナリシス(これまで実施された複数の研究を統合して解析する研究手法)の結果から、メディアの形態(TV、雑誌、SNSなど)に関わりなく、そのメディアがBMIが極端に低い細い体型やスタイルを視覚的にアピールしている場合、それを受け取る側のボディイメージに強く影響する結果、自分の体型に不満を感じ、拒食症を含む不健康な行動をとることが示されています。
政府がメディアを規制せざるを得ない状況に
フランスでは若年女性がモデル体型を理想とし過ぎる結果、拒食症を原因とした摂食障害が問題となっています。フランスでは約4万人が拒食症であると診断されており、その9割が女性です。その状況を重く見たフランス政府は雑誌モデルとして標準より極端に細いモデルの起用を禁止する法律を施行しました。モデルを起用する事務所に対して、モデルの体型が健康な範囲内であることを示す医師の診断書の提出を義務づけたのです。
政府が介入せざるを得ないほど、メディアのボディイメージへの悪影響は強いのです。
運動の役割
ダイエットを目的とした場合、体重や体脂肪の減少を目的に運動を実施するのが一般的です。しかし、運動のみで体型を変化させるには長期間のトレーニングを要するため、途中で運動をやめてしまうことが多いのが現状です。決意を固めて運動を始めたものの、高すぎる目標を達成できなかった挫折感から運動嫌いに繋がることも懸念されます。
では、ボディイメージのミスマッチに対して、運動をすることにそもそもメリットはあるのでしょうか?
これまで様々な運動(筋トレやジョギング、太極拳など)がボディイメージにどういった影響を及ぼすのかが様々な観点から調査が行われてきました。それらの結果から、筋トレもウォーキングも共にボディイメージを改善することで、運動実施者が自分の体型に自信を持てるようになることが明らかとなりました。
筋トレを長期的に実施すれば、体がより強く細く引き締まった体になります。有酸素性運動を継続的に実施すれば、全身性の持久力の向上が実感できます。運動は自分の機能的な体力を知らしめてくれることで、より自分を客観的に評価し、ボディイメージとは異なる観点から自分の体を観察することができるのです。
しかし、興味深いことに、運動実施による減量効果や体力改善効果が認められない場合でも、運動することでボディイメージが有意に改善することがメタアナリシスによって明らかとなっています(*注1)。
つまり、運動実施をつうじて体力や体型の変化が起きなかったとしても、運動はボディイメージを改善し、自己満足感を向上させるのです。
運動する際には、非現実的な体重減少や体型を最終目標とせず、健康増進や気分転換を目的として実施しましょう。
(*注1)この研究では運動量や運動の種類はボディイメージの改善の決定要因ではありませんでしたが、運動の頻度(週に何回その運動を実施するか)が最も重要な因子として抽出されました。
つまり、実施する運動はどれでも良いが、運動の頻度は多い方がボディイメージの改善にはより効果的、ということを示します。
残念ながら、運動がどのようにして個人のボディイメージに対する意識に影響するのか、その生理的・心理的な機序は明確になっていません。
参考文献:
- Campbell, A. and H.A. Hausenblas: Effects of exercise interventions on body image: a meta-analysis. J Health Psychol, 14(6): p. 780-93, 2009.
- Tucker, L.A. and R. Mortell: Comparison of the effects of walking and weight training programs on body image in middle-aged women: an experimental study. Am J Health Promot, 8(1): p. 34-42, 1993.
- Grabe, S., L.M. Ward, et al.: The role of the media in body image concerns among women: a meta-analysis of experimental and correlational studies. Psychol Bull, 134(3): p. 460-76, 2008.
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