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筋肉の量はどのように調節されているのか?

今日は筋肉を構成するタンパク質の代謝について説明したいと思います。

 

筋肉(骨格筋)は身体において最も大きな組織であり、全身に蓄えられてるタンパク質全ての50%をも占めます。

日常的には見た目に大きな変化を示さない筋肉の量ですが、細胞レベルにおいて観察すると、筋肉を構成するタンパク質は24時間常にその合成(新しく筋肉を作るプロセス)と分解(古い・損傷した筋肉を壊すプロセス)を続けています。

通常の日常生活において、筋肉の量は異化作用(空腹時、ストレスなど)と同化作用(栄養摂取、運動など)の微細なバランスによって一定に保たれています

 

タンパク質の合成と分解の差を出納バランスと呼びます(図参照)。

筋肉の量的な増加は出納バランスがプラスの状態(図中の横軸より上に曲線が推移している時間帯:合成有意)、つまり筋肉を構成するタンパク質の合成速度がその分解速度を上回った場合のみ可能となり、逆に筋肉のタンパク質の分解速度が合成を上回る(図中の横軸より下の状態:分解有意)と筋量の量が減る状態(異化状態)となります。

空腹の時間帯において、タンパク質の出納バランスはマイナス(異化状態)ですが、食事の摂取によってのみ出納バランスがプラス(同化状態)に移行します。

その結果、空腹時に失われた筋タンパク質が補われることで、24時間の出納バランスがプラスマイナスゼロとなり、筋量が維持されます。

筋肉のタンパク質を分解する時間帯の大半を占める空腹時のタンパク質の代謝に着目すると、実は空腹時の代謝は加齢の影響を受けないことが研究で明らかとなっています(つまり高齢者だから筋肉がより分解されている、ということではない)。

よって加齢に伴う筋肉の減少は、おそらく筋肉のタンパク質を合成する刺激の減少(運動不足や低栄養摂取など)、あるいは栄養摂取や運動など、筋肉の合成を促す要素に対する感受性の低下(つまり加齢に伴い同じ運動や栄養刺激を与えても合成が若年者ほど増加できなくなる)によるものであると推測されます。

 

以上のことからも、サルコペニア予防に向けた筋肉の積極的な増加に向けた対策として、運動と栄養摂取のアプローチがより重要であることが分かります。

 

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(注1)以前お話ししたような、病気やケガ、それに伴う寝たきりの状態はこの出納バランスを崩し、筋肉を減らしてしまいます。

ケガや疾患で筋肉以外の臓器が損傷した場合、その臓器の修復に必要なアミノ酸の供給も筋肉が担っています。サルコペニアの方が非サルコペニアの患者と比較して、入院から元気に社会復帰することが困難である一つの理由が、このアミノ酸供給源である筋肉のアミノ酸貯蔵量の低下であることが指摘されています。

 

参考文献:

  • Volpi E et al. Basal muscle amino acid kinetics and protein synthesis in healthy young and older men. JAMA. Sep12;286(10):1206-12, 2001.
  • Fujita S, Volpi E. Amino acids and muscle loss with aging. J Nutr. Jan;136(1 Suppl):277S-80S, 2006.

 

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